Valkeyとは?Redisから分かれたOSSの正体|ライセンス・互換性・移行の判断材料
キャッシュやセッション管理で長く使われてきたRedisですが、2024年のライセンス変更をきっかけに「Valkey(ヴァルキー)」という名前を見かける機会が増えました。AWSやGoogle Cloudのマネージドサービスでも選択肢に並び、主要なLinuxディストリビューションが標準パッケージとして採用し始めています。
「Redisと何が違うのか」「今あるRedisをそのまま置き換えられるのか」「ライセンスは結局どうなったのか」と迷っている方も多いでしょう。本記事では、フォークが起きた経緯、Redisとの互換性とライセンスの違い、最新のValkey 9.0で何が変わったか、そして移行を判断するうえで確認すべき点を、一次情報をもとに整理します。
- この記事でわかること:Valkeyが生まれた背景と、Redisとの関係。
- ライセンス(BSD 3-Clause)とガバナンスの違い、互換性の現状。
- Valkey 9.0の主な新機能と、性能面のアップデート。
- 導入・移行を判断するときに確認すべきコスト・運用・セキュリティの観点。
Valkeyとは?Redisから分岐したOSS
Valkeyは、Redisと互換性を持つインメモリのデータストア/キャッシュサーバーのオープンソース実装です。Redis 7.2系のコードを起点にフォークされ、現在はThe Linux Foundationのプロジェクトとして開発されています。ライセンスはOSI承認の許諾的ライセンスであるBSD 3-Clauseで、商用利用・改変・再配布に追加の制限はありません(公式サイト: https://valkey.io )。
キーバリュー型のデータ構造(文字列・ハッシュ・リスト・セット・ソート済みセットなど)、Pub/Sub、クラスタリング、永続化といったRedisでおなじみの機能をそのまま備えています。クライアントライブラリやコマンド体系の多くも共通しているため、既存のRedis資産を活かしやすい点が特徴です。
なぜフォークが起きたのか:ライセンス変更の経緯
Redisは2009年にSalvatore Sanfilippo氏が作成し、長くBSDライセンスの下でオープンソースとして開発されてきました。状況が変わったのは2024年3月で、Redis Ltd.がライセンスを「Redis Source Available License v2(RSALv2)」と「Server Side Public License v1(SSPLv1)」のデュアル“ソースアベイラブル”ライセンスへ移行したことがきっかけです。これらはクラウド事業者によるマネージド提供などを制限する内容で、OSIの定義するオープンソースには該当しません。
ライセンス変更からわずか8日後、The Linux Foundationがオープンソースの後継としてValkeyの立ち上げを発表しました。Amazon・Google・Alibaba・Ericsson・Huawei・Tencentといった企業の貢献者が中心となり、その後さらに多くの企業が参加しています。最初の公式版としてValkey 7.2.5がリリースされ、フォーク前のRedisと連続性を保った形で開発が引き継がれました(経緯の詳細: https://valkey.io/topics/history/ )。
ValkeyとRedisの違い:ライセンス・互換性・ガバナンス
実務上いちばん意識すべき違いはライセンスとガバナンスです。Valkeyは一貫してBSD 3-Clauseを採用し、特定企業が単独でライセンスを変更できないLinux Foundationの体制下にあります。一方Redisは、2025年5月のRedis 8.0でOSI承認のAGPLv3を選択肢として追加し、現在はRSALv2/SSPLv1/AGPLv3のトライライセンス構成になりました(Redis社の解説: https://redis.io/blog/what-is-valkey/ )。
AGPLv3はOSI承認のオープンソースライセンスですが、ネットワーク経由でサービス提供する場合に改変部分の公開を求める「ネットワーク・コピーレフト」を伴います。Redisを改変して自社サービスに組み込む場合、この条項が問題になるかどうかは法務での確認が必要です。純粋に許諾的なライセンスを求めるならValkeyのBSD 3-Clauseが扱いやすい選択肢になります。
| 観点 | Valkey | Redis(8.0以降) |
|---|---|---|
| ライセンス | BSD 3-Clause(許諾的) | RSALv2/SSPLv1/AGPLv3のトライライセンス |
| ガバナンス | Linux Foundation(複数企業の共同運営) | Redis Ltd. による単一ベンダー主導 |
| 起点 | Redis 7.2系からフォーク | オリジナルの継続開発 |
| 互換性の方針 | 既存Redisクライアント・コマンドとの互換を重視 | 独自機能・モジュールを拡充 |
Valkey 9.0で何が変わったか
2025年10月21日に公開されたValkey 9.0は、フォーク後の独自進化が目立つメジャーバージョンです。長く要望のあった機能と大規模クラスタ向けの性能改善が中心になっています(リリース解説: https://valkey.io/blog/introducing-valkey-9/ )。コミュニティは年1回のメジャーリリースを基本とし、必要に応じてマイナー版を提供する方針です。
- ハッシュのフィールド単位の有効期限(HEXPIRE / HPERSIST / HTTL)。従来はキー単位でしか設定できなかったTTLを、フィールドごとに指定できる。
- アトミックなスロット移行:クラスタのスロットをキー単位ではなくまとめて移行し、移行中の性能低下を抑える。
- クラスタモードでの番号付きデータベースのサポート。
- 大規模クラスタで毎秒10億リクエスト規模に対応(最大2,000ノード)。パイプライン処理のメモリプリフェッチで最大40%、ゼロコピー応答で最大20%のスループット向上。
導入・移行時に確認すべき判断材料
高い互換性を持つとはいえ、本番環境の移行は「動くはず」で進めず、コスト・運用・セキュリティの観点を事前に確認します。最新の安定版は9.0系のほか、長期的に使いやすい8.1系の保守も継続しているため、利用するマネージドサービスや機能要件に合わせてバージョンを選びます。
- 互換性の検証:使用しているコマンド・データ構造・クライアントライブラリが対象バージョンのValkeyで動作するかをテスト環境で確認する。Redis固有のモジュールに依存している場合は代替の有無を調べる。
- マネージドサービスの対応:AWS ElastiCacheやGoogle Cloud Memorystoreなど、利用中のクラウドがValkeyを提供しているか、料金やサポート範囲はどうかを公式情報で確認する。
- ライセンスの整合性:自社の利用形態(社内利用か、改変してネットワーク提供するか)と、ValkeyのBSD/RedisのAGPLv3などの条件が合うかを法務と確認する。
- データ移行と永続化:RDB/AOFやレプリケーションを使った移行手順、バックアップと復元手順、切り戻し計画を事前に用意する。
- セキュリティと運用:認証(ACL)、通信のTLS化、公開範囲の制限、バージョン更新と脆弱性情報の追跡体制を、移行を機に見直す。
まとめ:Valkeyは“以前のRedis”を引き継ぐ選択肢
Valkeyは、Redisがソースアベイラブルへ移行したことを受けて生まれた、BSDライセンスのオープンソース後継です。Linux Foundationの共同運営により単一ベンダーがライセンスを左右しにくく、許諾的ライセンスを重視する組織にとっては扱いやすい選択肢になっています。
一方でRedis 8.0以降はAGPLv3を加えて再びオープンソースの選択肢を提供しており、どちらが適切かは利用形態とライセンス条件次第です。互換性・コスト・運用・セキュリティを実環境で検証したうえで、目的に合うほうを段階的に選んでください。最新の仕様やリリース情報は、必ず下記の一次情報で確認することをおすすめします。
参考リンク
- Valkey 公式サイト
- https://valkey.io
- Valkey の歴史(フォークの経緯)
- https://valkey.io/topics/history/
- Valkey 9.0 リリース解説
- https://valkey.io/blog/introducing-valkey-9/
- Valkey リリース一覧
- https://valkey.io/download/releases/
- GitHub リポジトリ
- https://github.com/valkey-io/valkey
- Redis 社による Valkey との比較記事
- https://redis.io/blog/what-is-valkey/
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