OpenAIの新モデル「GPT-5.2」とは?

OpenAIから、新しいAIモデル「GPT-5.2」がリリースされました。今回の発表で特に注目を集めているのが、「専門家レベルの性能」を持つという大胆な主張です。
しかし、現代のAI開発を理解するには、少し見方を変える必要があります。それはまるで、広大な土地にいる無数の羊を数える作業に似ています。
現在のAIは、一つ一つのタスク(羊)を地道に数え上げ、自動化している段階です。この「羊を数える」という視点を持つと、GPT-5.2の真の実力と、AI開発の現在地がはっきりと見えてきます。
本記事では、最新のベンチマーク結果と専門家の分析をもとに、GPT-5.2の実力とAI開発の今を、誰にでもわかる形で解説していきます。
この記事でわかること
- GPT-5.2が「専門家レベル」と主張される理由と、その評価に潜む注意点
- AIの性能比較を複雑にする「思考時間」という新しい常識
- Gemini 3 ProやClaude 4.5 Opusなど、ライバルAIとの具体的な性能比較
- AI開発の現状と未来を読み解く「羊を数える」たとえ話
1. GPT-5.2の「専門家レベル」という主張は本当?
OpenAIは、GPT-5.2の性能を示すために「GDP Val」というベンチマークの結果を公表しました。
GPT-5.2は、業界の専門家と比較して71%のケースで同等かそれ以上の性能を示した
これは、AIが「デジタルの知識労働」という広大な牧場にいる羊を、着実に数え上げていることを示す印象的な数字です。
ただし、この「専門家レベル」という言葉を鵜呑みにする前に、いくつか注意点があります。
注意すべきポイント
- デジタル作業に限定:評価対象はPC上で完結するタスクのみ
- 暗黙知が不要:資料持ち込み可のオープンブック形式
- 致命的ミスの影響を考慮しない:重大な失敗がスコアに反映されない
そのため、「専門家レベル」という表現は、管理された条件下での評価であることを理解した上で受け取る必要があります。
とはいえ、GPT-5.2が特定タスクで非常に高い能力を示すのも事実です。たとえば、
特定のサッカークラブの全試合結果を調査し、対戦表(インタラクションマトリックス)を作成
といった複雑なタスクを、正確にこなした事例も報告されています。
2. AIの性能は「思考時間」で決まる?
最近のAI評価では、単純な正解率だけでは性能を測れません。重要なのは、AIがどれだけの思考時間(計算コスト)を使ったかです。
新しい評価の難しさ
- スコアが高い理由が「賢さ」なのか「計算量」なのか判別しにくい
- 多くのトークンを使えばスコアは伸びやすい
その象徴が、ARC-AGIベンチマークです。このテストでは、思考時間を増やすほどスコアが向上します。
GPT-5.2 Pro(extra high reasoning effort)は90%以上の過去最高スコアを達成
一方で、技術自体も進歩しています。同じ性能を出すための効率は、1年前と比べて約390倍向上しており、AIはより賢く、より効率的になっています。
3. ライバルAIとの性能比較
現在のAI業界は、「一人の王者」ではなく、分野ごとに強みを持つ専門家集団の時代に入りました。
画像認識(Visual Understanding)
- Gemini 3 Pro:基板や細部の認識精度で優位
- GPT-5.2:良好だが、細部では一歩譲る
グラフ・表の読解
- MMU Pro:Gemini 3 Pro(81%) > GPT-5.2(80.4%)
- Charive Reasoning:GPT-5.2(88.7%) > Gemini 3 Pro(81%)
常識・ひっかけ問題(SimpleBench)
- Gemini 3 Pro:76.4%
- GPT-5.2 Pro:57.4%
この結果から、ベンチマーク対策に最適化しすぎた反動の可能性(benchmark maxing)が指摘されています。
長文読解・記憶力
- GPT-5.2:〜40万トークンで高精度
- Gemini 3 Pro:最大100万トークン対応
コーディング・Web開発
- Claude 4.5 Opusが依然としてトップクラス
4. 結局、どのAIが一番賢いのか?
結論はシンプルです。
「用途に合ったモデルを使用するのが一番賢い」
- GPT-5.2:中〜長文読解、知識タスク
- Gemini 3 Pro:画像認識、超長文
- Claude 4.5 Opus:コーディング
複数AIに「誰が一番賢いか?」を議論させたところ、お互いを褒め合ってばかりで結論が出なかったというエピソードもあり、優劣の難しさを象徴しています。
5. AI開発の未来と「羊を数える」話
AI開発は、突然すべてを解決する魔法ではなく、タスクを1つずつ自動化する地道な進歩です。
GDP Valの進歩は、その象徴と言えるでしょう。
さらに、AIはデジタル領域だけでなく、物理世界にも進出しています。
- 壊れやすいワイングラスを食洗機に並べるロボット(Sunday Robotics)
OpenAI CEOのSam Altman氏は、
「10年以内に超知能を構築できると確信している」
と語っています。
GPT-5.2で得られた知見は、すでに次世代モデルに活かされているとのことです。
まとめ
- GPT-5.2は非常に高性能だが、評価条件の理解が重要
- AI評価は「思考時間(コスト)」を含めて考える時代
- 現在は分野別に強みを持つ専門家集団の時代
- AIは「羊を数える」ように着実に進化している
今後もAIの進化から目が離せません。
一次情報・参考リンク
- OpenAI 公式サイト:https://openai.com/
- AI Explained(YouTube):https://www.youtube.com/@aiexplained-official
- ARC-AGI Benchmark:https://arcprize.org/
- LM Arena:https://lmarena.ai/
- Anthropic(Claude):https://www.anthropic.com/
- Google Gemini:https://deepmind.google/technologies/gemini/
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