
Obsidian向けのAIプラグインは、以前この記事で「Smart Connections」(セマンティック検索によるVault内リンク発見)と「Agent Client」(ACP経由でClaude CodeなどのCLIエージェントをVaultから動かす)を取り上げました。もう一つ方向性が異なるプラグインがあります。「Smart Composer」(https://github.com/glowingjade/obsidian-smart-composer )です。CursorやChatGPT Canvasに近い、チャットで指示してノートを一括編集する体験をObsidianに持ち込むプラグインで、コミュニティプラグイン一覧にも`id: "smart-composer"`として正式登録されています。
この記事は公式リポジトリのREADME・`manifest.json`・`package.json`を一次情報としつつ、実際にリポジトリをクローンして`npm install`から`npm run build`までをこの検証環境で試した記録です。あわせて、README自身が明記しているClaudeサブスクリプション接続時のリスク警告の中身も、リンク先の一次情報まで遡って確認しました。
- この記事でわかること:Smart Composerがどういう体験のプラグインで、何ができるか。
- APIキー方式に加えて用意されている「サブスクリプション接続(APIキー不要)」機能の仕組み。
- README公式の警告:Anthropicが2026年1月以降サードパーティOAuthを制限し、Claudeアカウントが制限・BANされた報告があること。
- 実際にビルドすると`main.js`が約9.15MB(9,154,511バイト)になり、同じ検証済みのAgent Client(約819KB)より大幅に大きい理由。
- 「開発は現在アクティブではない」という現状のメンテナンス体制。
Smart Composerとは
READMEはSmart Composerを「Vaultの内容を簡単に参照しながら、AIで効率よく執筆できるObsidianプラグイン」と説明し、「Cursor AIとChatGPT Canvasに着想を得た」設計だと明記しています。典型的なAIプラグインと違う点として強調されているのは、`@<ファイル名>`で会話のコンテキストに含めるファイル・フォルダを精密に選べることです。
`manifest.json`によると開発者はHeesu Suh氏、ライセンスはMIT、確認時点のバージョンは1.2.9でした。Obsidian公式のプラグイン一覧データ(`obsidianmd/obsidian-releases`リポジトリの`community-plugins.json`)にも`id: "smart-composer"`、リポジトリ`glowingjade/obsidian-smart-composer`として登録されているのを確認しています。Agent Clientのエントリにあった「スタッフによる手動レビュー未了」という注記はこちらには付いていませんでした。
主な機能
READMEに列挙されている機能は次の通りです。`@`によるファイル・フォルダ指定のコンテキストチャット、Webサイトのリンク・画像・YouTubeリンク(トランスクリプト自動取得)を追加コンテキストとして渡せるマルチメディア対応、AIが提案した編集を1クリックで適用する「Apply Edit」、`Cmd+Shift+Enter`でVault全体をセマンティック検索してコンテキストを自動取得する「Vault Search(RAG)」、そして外部ツール・データソースに接続するModel Context Protocol(MCP)対応です。
対応するAIプロバイダーはOpenAI、Anthropic、Google(Gemini)、Groq、DeepSeek、OpenRouter、Azure OpenAI、Ollama、LM Studio、MorphLLM、その他OpenAI互換API全般です。ローカルLLMをOllamaで動かせば、Vaultの内容を外部に出さずに使うこともできるとREADMEは説明しています。
実際にソースを取得してビルドしてみる
検証環境(Node.js v22.22.2、npm 10.9.7)でリポジトリをクローンし`npm install`を実行したところ、941パッケージが追加されて完了しました。`npm audit`は31件の脆弱性(critical 1件、high 15件、moderate 13件、low 2件)を報告しています。件数だけ見ると多く感じますが、これは依存パッケージ側の既知の指摘であり、実際に影響を受けるかは個別に確認が必要です。
続けて`npm run build`(内部では`tsc -noEmit -skipLibCheck && node esbuild.config.mjs production`)を実行すると、型エラーなく`main.js`が生成されました。ファイルサイズは9,154,511バイト(約8.7MB)です。以前検証したAgent Client(約819KB)と比べると約11倍で、チャットUI・ベクター検索用のDB(`drizzle`)・シンタックスハイライト・React一式など、単一プロセス内で完結させる機能を多く抱えている分、バンドルが大きくなっていると読み取れます。
Claudeサブスクリプション接続と、READMEが明記するBANリスク
v1.2.7からは「APIキー不要でClaude/OpenAIアカウントを直接接続」する機能が追加されました。設定画面の「Connect your subscription」からOAuth風のフローでアカウントを接続すると、Claude Pro/MaxやChatGPT Plusのサブスクリプションをそのまま使い、従量課金のAPIキーを別途取得しなくて済む、という趣旨の機能です。
ただしREADMEはこの機能の直前に赤字の警告ブロックを置いています。要旨は次の通りです。「2026年1月時点で、Anthropicは利用規約違反を理由にサードパーティのOAuthアクセスを制限している」「Smart Composerのサブスク接続は、OpenCodeなど他のツールが使ってきたのと同じOAuth風のフローを使っており、サードパーティクライアント経由でサブスクOAuthを使うとClaudeアカウントがBANまたは制限されたという報告がある」。根拠として挙げられているOpenCode側のIssue(https://github.com/anomalyco/opencode/issues/6930 )を確認すると、投稿者は数ヶ月Claude Codeを使ったのちOpenCodeにOAuth経由でログインしたところアカウント制限を受けたと報告しており、「OAuth認証ではなくAPIキーの従量課金にすべきだ」という趣旨で対応を求めていました。
READMEはOpenAI(ChatGPT)とGoogle(Gemini)については「同様のBAN報告は今のところ見ていないが、公式API利用と同一ではなく、取り締まりはいつでも変わりうる」と補足し、「自己責任で使うこと。個人利用・対話的なセッションに留め、自動化には使わないこと」と締めくくっています。Claudeサブスクリプションをすでに契約している人ほど「APIキー不要」の便利さに惹かれやすい機能ですが、公式README自身がここまで明示的にリスクを書いている以上、少なくとも現時点ではAPIキー経由の従量課金で使うほうが無難だと言えます。
メンテナンス体制について
READMEはもう一つ、警告ブロックを冒頭に掲げています。「このプラグインは現在1名の開発者によって保守されており、活発な開発は行われていない。不定期な更新やバグ修正はあるかもしれないが、IssueやFeature Requestは速やかにレビューされない可能性がある」という内容です。コミュニティによるフォーク一覧へのリンクも用意されており、本家の更新が止まった場合の代替手段として案内されています。
機能は充実している一方でこうした体制上の注意点もあるため、Vault内の重要な作業フローに組み込む前に、IssueやDiscussionsで直近の反応速度を確認しておくと安心です。
まとめ
Smart Composerは、Vault内のファイルをピンポイントで参照しながらチャットで編集提案を受け、1クリックで適用できる、Cursorに近い書き心地をObsidianに持ち込むプラグインです。MCP対応や多数のAIプロバイダー対応など機能面は充実していますが、実際にビルドすると約8.7MBとバンドルサイズは大きめで、単一開発者によるメンテナンス体制という制約もあります。
とりわけ注意したいのは、README自身が明記しているClaudeサブスクリプション接続のリスクです。APIキーなしでサブスクをそのまま使える手軽さの裏で、Anthropicのサードパーティ制限によるアカウントBANの報告が実例として挙げられています。導入する場合は、まずAPIキー経由の従量課金で試し、サブスク接続を使うかどうかはリスクを理解した上で判断するのが良いでしょう。
参考リンク
- Smart Composer 公式リポジトリ(README・ライセンス・ソースコード)
- https://github.com/glowingjade/obsidian-smart-composer
- 公式ドキュメント(Wiki)
- https://github.com/glowingjade/obsidian-smart-composer/wiki
- manifest.json(バージョン・対応Obsidianバージョン)
- https://github.com/glowingjade/obsidian-smart-composer/blob/main/manifest.json
- コミュニティフォーク一覧(Discussions)
- https://github.com/glowingjade/obsidian-smart-composer/discussions/496
- Claudeサブスク接続のBAN報告の根拠となったOpenCode側のIssue
- https://github.com/anomalyco/opencode/issues/6930
- Obsidian公式コミュニティプラグイン一覧(登録エントリ)
- https://github.com/obsidianmd/obsidian-releases/blob/master/community-plugins.json
- Model Context Protocol 公式サイト
- https://modelcontextprotocol.io
